元信金窓口が遭遇した困ったお客様②〜消えた定期預金事件〜
ごきげんよう!楓華 @Wisfil_Fukaです。
先日に引き続きまして、昨年12月までの約8年弱信用金庫で勤務した中で出会った、困った(ヤバイ)お客様について紹介します。
第2回の今回は、消えた定期預金事件です!
1回目の、〜ここは商店じゃないのよ〜は、こちらから。
信用金庫に入庫から退職までの過程については、こちらから!
プロローグ
私が、東京の下町にあるY支店に勤務していた時のことです。
C山さんという、60代後半の女性のお客様が5〜6枚の定期預金証書の記入のためにご来店されました。
この方は、あまりご来店をされない方のようでお持ちの定期預金は昔の金利の低い商品でしたので、今C山様にご案内出来る1番金利の良い定期預金や投資商品のご案内をしました。
しかし、残念ながらこの日はご印鑑をお持ちでなかったため何の手続きもできず、後日再来店頂き手続きをすることに。
退店間際、C山様は思い出した様に、
「そういえば、息子のタカシ名義で定期預金が200万円くらいあると思うのだけれど、今どうなっている?」と尋ねてきました。
息子様が未成年ではないことを確認し(未成年の場合は親権者にお伝え可能)、親子とは言えども取引状況は個人情報にあたるので、お教えすることが出来ないと伝えましたが、
「私がそもそも息子のためにした預金なのよ?それはおかしい。」とご立腹に。
このようなケース(成人後の子どもの預金を、元々は自分が貯めたものだから…知る権利がある!と仰られること)は、よくあることなので、役席に判断を仰いだ上で、
息子様のお名前、住所、生年月日を伺い、同居の親であるだろうと推測できるご本人確認書類を拝見し、
金額は教えず、預金取引があるかだけをお伝えすることにしました。
しかし、調べたところ、C山タカシ様で該当顧客はありませんでした。
このような場合で考えられることとしては以下の2つです。
- そもそも預金取引をしていない。
- 取引は過去にあったが、現在全て解約済み。(預金取引がなくなり一定期間が経過すると、顧客抹消という扱いになり、氏名や生年月日などのデータが消去されるため、検索に引っかからない。)
この2つの可能性をC山様にお伝えし、
C山様は「私の勘違いかな。でも定期の証書絶対あったと思う。もう一回探してみる!」と仰り退店されました。
「睡眠預金よ!」「盗んだんじゃないの?」
それから1週間ほど経過し、C山様が再来店されました。
「息子様名義の定期預金証書を探したけれど、見つからない。でも絶対に預けている。」
「息子も預けた記憶があると言っている。もしかして睡眠預金(休眠預金)になって預けたお金、A信金さんが盗んだんじゃないの?調べて。」
と仰いました。
まず、睡眠預金(休眠預金)とは10年間全く入出金が一切なく、預金者への連絡が出来なくなった状態の預金をさす言葉ですが、
この預金は、眠ってしまっているので、
ATMでキャッシュカードを使用して入出金したり、振込がされたり、公共料金などの引落をしたりという“通常の取引”が一切出来なくはなりますが、
お預かりした預金を金融機関が勝手に盗んで、自分のものに出来るものではありません。
イメージとしては、睡眠預金扱いのお金だけが集められた箱に別保管して眠らせているだけで、預金者ご本人がご来店され、ご本人確認のうえ所定の手続きをすると、お預かりした預金はお返しできます。
また、期限の10年間近になるとお届けの住所に、
『口座番号:123456の預金を一定期間使ってないですが、忘れてませんか?』
というお知らせを郵送しているので、C山様はお届けの住所から引っ越されていないため、睡眠預金に該当している場合はお知らせを郵送しているはずであること、
また、睡眠預金に該当する場合は顧客が抹消されることはないので、検索に引っかかるはずであること。をお伝えしました。
(ちなみに、お届けの住所が変わっている場合も顧客登録は消されず、睡眠預金の口座番号と預金額、“郵送物届かず”という情報は残ります。)
さらに、横領なども店内監査が定期的にありチェック及び監視体制があるので、職員が勝手にお客様のご預金に手をつけることも考えにくこともお話しました。
しかし、ご納得は頂けず、
「人の預金をなくす(盗む)金融機関は信用できない。皆に言いふらすし、今ある私の定期預金を全て解約して普通預金に入れる。全部預金も他に移す!」と仰られました。
役席となだめつつ、お客様が「信用できない」と仰るのならもう引き止める事は不可能と判断し、
定期預金5〜6本を全て解約し、普通預金に全額入れることにしました。
ご本人が登場し真相判明!しかし…
それから、1ヶ月ほどしC山様が息子のタカシ様と一緒にご来店されました。
タカシ様は、
「僕の預金あるみたいなので、調べてください。本人ならもっと調べて貰えるんじゃないかって(母が)言うんで。あと、待つの面倒なので結果は母に伝えてくださーい。」
という、『母がうるさいので来ました。』というような感じで、無関心なご様子。
タカシ様のご本人確認書類を拝見し、ご本人であることを確認の上、再度調べ直すことに。
実は、1ヶ月前にC山様が帰られたあと、本部に問い合わせ、抹消済みの顧客検索方法、その顧客の過去の取引履歴検索方法を教えて貰い、ご本人様(タカシ様)が来店されたら更なる詳細な調査をすることに決めていたので、
先日とは違う検索方法、調査方法で調べることにしました。
すると、C山タカシ様ご名義での抹消済みの顧客情報と過去の取引履歴が見つかりました。
5年ほど前に、3本あった計200万円ほどの定期預金を全て解約し現金で持ち帰られていること、
この日に全ての預金を解約されているので、取引が解消され数年前に顧客が抹消されたことが発覚しました。
そのことをC山様にお伝えしましたが、
「誰が解約したというのよ。息子が勝手に解約してお金持って行くわけないじゃない。証拠は?」と更にヒートアップ。
解約の際に、ご本人確認書類を拝見し、解約伝票に自筆して頂き、届出印鑑を押印頂く決まりになっているので、解約伝票が証拠になるかと思うこと。その現物を見せることは出来ること。
しかし、過去の伝票は支店ではなく、遠方の倉庫に保管されているので、取り寄せに2〜3日ほどかかること。
さらに、息子様に伝票取り寄せの許可と取り寄せた伝票をお母様に見せる許可を取りたいこと。
の計3点を申し上げましたが、
「なんで、すぐに証拠を出せないの?2〜3日もかかるの?何かやましいことがあるんじゃないの。息子が勝手に解約するはずはないのよ。おかしい!」と仰り、聞き入れて頂けませんでした。
結局、役席より息子様(ご本人様)がご来店された際に伺った、携帯電話番号に電話し、事情を話した上で伝票を取寄後再来店をお願いしたいこと、
来店が難しいということならお母様にそれを見せても良いか。
を伺い、伝票を取り寄せ、お母様に見せる流れに決まりました。
(息子さんは、「僕よく分からないので、母に見せてください。」と安定の無関心ぶりだったそうです。)
証拠は揃った。しかし…
それから、数日して5年前にC山タカシ様が定期預金を解約した際に記入された解約伝票の現物が支店に届きました。
伝票には、タカシ様の自筆だと推測される(携帯電話番号を書いて頂いた際の字と酷似していたので…)文字と、届出の印鑑の押印、
そして伝票の裏面には、運転免許証にてご本人確認をしたこと、『商品購入費用に使いたいため、解約し現金で持ち帰り』という受付者のメモが残されていました。
証拠(解約伝票)が用意出来たので、C山様に電話をしましたが不在が続き、1週間経っても来店はされませんでした。
その後、お手紙も郵送し、ご来店をお願いしましたが、
結局、私が退職するまでの半年来店されることはありませんでした。
あれほどご立腹になり何度も何度も来店され、
その都度「おかしい!」「盗んだ!」「預けたお金なくした!」と窓口で怒鳴り、
ネチネチ文句を言い、他のお客様にも聞こえる音量で「盗んだ!」「預金をなくした!」などと騒いだのに、
私としても、なんとか解決したい。ご理解頂きたい。と役席に助けを求めながら、証拠も揃えたというのに…一体何だったのでしょうか…。
とても不思議かつ、困ったお客様でした。
エピローグ
本文中には書きませんでしたが、
C山様は他にも「(自分の)定期預金が満期、自動継続になるというお知らせハガキも届いていない。その点に関しても(当信用金庫が)信用出来ない!」と仰いました。
C山様のご住所は、登録と現住所で変わりがなかったので、ハガキは郵送されているはずであることをお伝えし、
「それでは、定期預金の満期のお知らせハガキが何月何日に発送されているのかを調べ、タカシ様の解約伝票をお見せする際にお伝えします。」と申し上げ、
担当部署に問い合わせ郵送日及び、郵送した葉書の内容のコピーを用意していましたが、
それをお伝えしお見せする機会も頂けませんでした。
推測でしかありませんが、
完全に当庫に愛想が尽きて二度と来店したくない!と思ったのか、
解約したことを思い出した、葉書が見つかり引っ込みがつかなくなったか、
のどちらかなのかな。出来れば後者だと良いなぁ。と思います。
お客様には、信じて頂き難いとは思いますが、元金融機関の職員としては、
金融機関は正確さが求められているのでチェック体制が備わっていますし、
お金を扱う業種、過去に横領事件が発生しているということもあり、職員に対する監視・管理体制も厳格です。
また、あらゆる記録も残されており、過去10年ほどでしたら、確実にあらゆる記録が残っており、
“預金が消える”“盗まれた”ということも考えにくいので、どうか安心してお預け頂き、信用して欲しいな。なんて思います。
まぁでも最近の金融機関は、あらゆる手数料やカードローンなどの高利子で儲けているので信じろ!と言われてもイマイチ信じにくいんですけどねー笑。
最後まで読んでいただき、ありがとうございまいた。
それでは!ごきげんよう。
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