CHESS THE MUSICAL感想

2020-02-08

ごきげんよう!楓華です。

2月2日マチネ公演でCHESS THE MUSICALを観劇してきました。

大学生の頃に、オペラ座の怪人25周年コンサートで初めて見て度肝を抜かれたラミンカリムルーと、

レミゼの25周年記念コンサートと映画版でもエポニーヌを演じたサマンサバークスが共演する!

と耳にしてストーリーも何も読まずして、チケットを買ってしまった今回のCHESS。

ストーリーは少し難しかったけれど、

来日キャスト、日本人キャストともに、

歌うまだらけ、演技力爆発しまくりでした。

舞台装置は階段とスクリーン、櫓みたいなところのみのシンプル。そして舞台上にオケがいる珍しさ。

(でも、コンサート形式という感じでもないし、シカゴみたいに芝居の一部として存在しているわけでもない不思議な感じ。)

衣装も、決して派手さはなく、スタイリッシュ。

また、ほぼ全員のアンサンブルが出ずっぱりで、

彼らアンサンブルの歌唱力と演技力がピカピカと光り輝く稀有な作品でもあると思います。(メンバー見たら実力派ばかりでびっくり!そりゃそうだ!って感じでもありました笑)

とてもカッコいい、超考えさせられる作品でした。

ストーリーと感想

ACT1

ストーリー

時は、米ソの冷戦時代。

チェスの世界チャンピオンである米国のフレディと、

ソ連のアナトリーとのチェスの世界一を決める対戦が行われる。

対戦前の記者会見でフレディは、対戦相手を罵り、記者からも非難を浴びせられる。

フレディは、世界チャンピオンとしての成功と孤独に苦しんでいた。

一方のアナトリーは、自国のソ連を背負ってゲームにのぞむことを息苦しく感じていた。

また、「フレディに勝つためには弱み(フレディの傍にいるセコンドで彼女のフローレンス)を握ることだ。」という自分側のセコンドーのモロコフの言葉にも、その裏にある政治的な目的にも嫌気がさしていた。

 

試合は、フレディが試合中にヤケを起こし試合放棄。

フローレンスがフレディに試合へ戻るように説得しても、

「ソ連をからかっただけ。」

「フローレンス(ハンガリー出身で幼い頃に父がソ軍に連れ去られた過去がある)の方こそ、ソ連を敵対視する理由があるんじゃないか?」と言い出して話し合いにならず。

フローレンスは、アナトリーを呼び、話し合いをしようと試みるも肝心のフレディは現れず、思いがけずフローレンスとアナトリーは恋に落ちてしまう。

そして、フレディはそれを見かけてしまい心を乱す。

試合に戻るも、集中できずに窮地に。

苛立ちをフローレンスにぶつけてしまい、大喧嘩の末フローレンスが出て行ったあと、不遇の少年時代を思い出し、フレディは自分にはチェスしかないことを再確認する。

だが結局試合を再度放棄し、アナトリーが新チャンピオンに。

 

そして、アナトリーは、故郷に妻子を残しているにも関わらず、フローレンスと英国へ亡命することを決める。

感想

はじめに冷戦時代のTIMES誌の表紙がいくつか画面に流れてきたが、米ソ冷戦時代は、歴史上の出来事として“なんとなく”しか理解をしていないため、少しとっつき難かった。

なので初めは、チェスの基盤を舞台に、米ソの冷戦を表すのかなぁ。分かるかな。と思ったけれど、

時世に飲み込まれそうになりながらも、スポーツマンシップに乗っ取り、

正々堂々とズルもせずに、相手の弱みを握ることも政治的背景も関係なく思惑もなくチェスで戦おうとしたアナトリーが、

“自分”や“故郷”を見つけていくお話だな。と感じた。

(ACT1の最後の「故郷を捨てるのではない。故郷は心のなかにこそある」という言葉、歌う姿、歌声には鳥肌がたった。)

また、フローレンスは父がソ連兵に連行され、ソ連を憎んでいるので、今はアメリカに住み、アメリカ人の恋人(フレディ)がいる。

しかし、アナトリーに出会ったことにより、すぐに癇癪を起こすフレディ(米国)よりも、冷静でフェアなアナトリー(ソ連)に惹かれて、ソ連人への恨みや憎しみを少し緩和させていく。

ソ連の人だから嫌い。

アメリカの人だから好き。

ではなく、政治背景も自分の過去も母国も関係なく“人”として相手を見て好きになれた人間愛的な感じ?

うーん。日韓関係が悪化しても韓国の子とは、別に問題なく仲良くし続けられる感じかな。

国同士と民間、個人間は別というか。。

うまく言えないけれど、フローレンスの気持ちは複雑ながらも分かるような気がした。

フレディは、自分にはチェスしかない!とか思う割には、

すぐに癇癪を起こすし、冷静さを保てないし、

「なんなの?クズ野郎」という印象しか持てなかった。

アンサンブルは黒いコートを羽織り、終始舞台上にいて記者になり追いかけ回したり、傍観したり、チェスの戦況をみて反応したり、不気味さと面白さ、そしてダンスと歌のスキルに1部では圧倒された。

審判のアービターは、厳格で冷静で毅然としていて、何を考えているのか、どんな感情なのか全く読めずに不気味だった。

ACT2

ストーリー

1年後、再びチェスの世界大会が開催される。

フレディは、テレビ業界に移りプレゼンターとしてチェスの世界選手権に。

その様子をテレビで見ていた、アナトリーとフローレンスは、「なぜフレディがテレビに?なぜ、また私たちの前に?」と思うが、何があっても2人で幸せになれるはずだと確かめ合う。

しかし、その会話はかつてのアナトリーのレフリーであるソ連のモロコフとソ連の代表団に盗聴されていた。

モロコフは、フローレンスと亡命したアナトリーを裏切り者と罵り、

ソ連選手で今度アナトリーと対決するヴィーガンドを褒め称える。

アナトリーがテレビ局へインタビューを受けるため訪れると、そこにはフレディが。

フレディは、インタビュアーとしてアナトリーにプライベートにまで踏み込む質問を投げかける。

そして、最後にはソ連よりアナトリーの妻スヴェトラーナを登場させた。アナトリーは状況に耐えられず逃げ出す。

残されたフローレンスとスヴェトラーナは、困惑しながらも自分ではなく、お互いがアナトリーに相応しいと実感する。

 

アナトリーとヴィーガンドの試合前、様々な思惑が交差し様々な取引が行われていた。

ソ連側のレフリーであるモロコフは、スヴェトラーナに、

「アナトリーを負けさせれば、好きな生活をさせてやる。」

と言った。実は、彼こそがスヴェトラーナを世界大会に呼んだ張本人だったのだ。

一方フレデイは、フローレンスに「君の父親は生きている」と告げ、

アナトリーにも、「フローレンスのために負けてくれ。負ければ、フローレンスの父が解放される。」と頼み込んだ。

試合が開始されると、見張るように眺めているフレディとモロコフの視線が刺さり、さらに頭の中では妻と恋人から責め立てられアナトリーは苦しむ。

しかし、周りの思惑にもシガラミにも屈せず、アナトリーは無事試合に勝利する。

試合後、空港にてアナトリーはフローレンスに、

「自分は、自由になるために。自由な選択をするために試合に勝った」と話す。

しかし、フローレンスは、

「アナトリーの選ぶ道は、妻子の元に帰ることだ。」と言い、

互いに愛し合いながらも別々の道を歩むことを決める。

感想

後半は、

ソ連というかモロコフの思惑に皆が動かされ、翻弄されていく感じで精神的にもキツかった。

観劇前に、たまたま、

『ソフトバンクの社員がロシアのスパイをいていた。

では、なぜそんなスパイ行為をしたのか。

それは、恐らくそのスパイ社員は、ロシアに何らかの弱みを握られていたのではないか。

ロシアは、組織的に人の弱みを見つけ、そこにつけ込み、人を傀儡とすることに長けている。』

というワイドショーを見ていたので、ロシア(ソ連)って本当にそうなんだ。こわーい。と思ってしまった。

アナトリーは、妻子を捨てたという弱み。

フローレンスは、父をソ連に連行されたという弱み(というか過去)。

スヴェトラーナは、旦那に捨てられ生活が(恐らく)困窮しているという弱み。

フレディは、自分にはチェスしかないのに、それすらも投げ出し逃げ出しどこにも行けなくなってしまったという弱み。

全員モロコフ(ソ連)に弱みを握られ、彼の掌中でチェスの駒のように動かされ、踊らされていて、とにかくキツかった。

でも、アナトリーは精神力でその“弱み”にも“シガラミ”にも“政治的思惑”にも打ち勝ちカッコ良かった。

だからこそ、心のなかに故郷は置きながらも、

フローレンスと前に進んで欲しいと思った。

けれど、フローレンスは妻子の元に戻るべきと言い、彼もそうした。

ここは、正直解せなかった。

不倫はよくない。妻子を捨てることも褒められたことではない。それは通例だけれども、

私は、彼を苦しめていた策略や思惑の絡まったソ連から離れて欲しかった。

妻子の元に戻ったら、折角精神力で打ち勝ち、モロコフの掌中から抜け出せたのに、

元の木阿弥になってしまうのでは?と思った。

最後に、審判役のアービターが、

「人の作った国など引き裂いて仕舞えばいい。私の祖国はここにある。私の心のなかに。」

と締めくくったけれど、

え?だから、それなら何故ソ連に戻る?とモヤモヤ。

 

私は、実家とは別のところに“故郷”があり、

もはや旅行でしかそこには帰れない。

正直寂しいし、悲しいけれど、

遠く離れていても、目を閉じればいつでも蘇るし、

だからこそ前に進める。

でも心のなかに美しい尊い故郷がある。

心のなかにこそ故郷はある。という考えはレベルは違っているとしても、アナトリーと共通していると思う。

けれど、前に進む方向が違っていてモヤモヤ。

私のおバカ脳では理解しきれず、モヤモヤ。

機会があれば、再度見てもう一度考え直したいです。

キャスト

ラミン・カリムルー

彼を見るのは、2014年のブロードウェイのレミゼ以来。

実に5年半ぶり。

(4stars見に行ったり、一時期ハマっていたのにご無沙汰でした。)

相変わらず、歌うまおばけ!

やはり、あれほど美しい高音を出せる男性は他にはいないと思う。

(芳雄のも好きだけど、また違う!オペラともまた違う。)

1部最後のANTHEMの力強い決意に満ちた歌声には涙が出た。

シガラミや思惑に負けそうになり、苦しみながらも対局する様子。そしてそれに打ち勝つ強い精神力を表す横顔。

試合中の真剣な眼差し。

フローレンスを見つめる優しい眼差し。

フレディを見る冷たい眼差し。

横顔、目での演技も格別でした。

また、近いうちに日本に来てください。

今度はすぐ見に行きます笑

サマンサ・バークス

サマンサはなかなかご縁がなく、やっとこさ生で見ることができました。

初めて映像で見たのは、レミゼの25周年コンサート。

この時すでに「なんて歌声が綺麗なんだろう。そしてエポニーヌそのものじゃん!」と度肝をぬかれ、

映画にも出演し更にファンに。

でも、全然来日しないし、

情報少なくて見る機会なくて、生で見るのは諦めていたところに、来日の知らせ!

もう彼女だけを目的に行きました。

生で見た、生で聞いた感想は…、

美声!の一言。

エポニーヌの時の透き通るような切ない歌声は健在。

さらに、映画から8年ほど経ち20代前半から20代後半になり、

力強く自立している女性のような歌声、表現力も備わり、素晴らしかった。

少女から、一人の女性として成長し、気品も備わった歌声と立ち居振る舞いも良かった。

日本にも歌唱力も演技力もある女優さんはいるけれど、

押し付けがましくない歌のうまさで、

演技力もあるサマンサほどの20代後半くらいの女優さんは、

なかなかいないなぁ。やっぱレベル違うなぁ。と感じました。

もしかしたら、いるのかもしれないけれど、

事務所とかの関係で表に出てこれてないのかも。

顔とか体型とか人気とか横に置いて、

ホンモノの若手実力派の発掘と育成お願いしまーす!笑

佐藤隆紀

シュガーくん凄すぎる。

全編英語ですよ?

難解な旋律でしかも英語で堂々と歌い、

外国人キャストに引けを取らない存在感と歌唱力。

 

エリザベートの入り待ちの際に、少しお話しをしたことがあるのですが、

笑顔の可愛い気さくで愉快なお兄ちゃん!という印象だったので、

今回の役柄の、厳格さと冷静さを感じさせる毅然とした態度。

決してズルを許さないと言わんばかりの鷹のような目。

“シュガーくん”なんて気軽に呼んで、話しかけていいような役者さんでは、もはやないな。と感じました。

最初のフランツの時から、歌唱力は凄かったけれど、

バルジャンあたり、というかバルジャンの途中から覚醒して演技力も役の深みも出てきて、

彼の歌唱力と演技力と可能性の成長は、どこまでいくんだろう。

と恐ろしいレベルです。

とりあえず、エリザベートのフランツ楽しみです。

(てか、フランツの役では勿体なくないですか?)

 

観劇から1日が経ち、見た直後は「!?」という感じでしたが、

少しずつ咀嚼し、少しずつ理解できるようになった気がします。

しかし、まだまだ解せないところもある今回の“CHESS”。

観劇前に、ストーリーを読みあらすじを理解したけれど、

時代背景についてもちゃんと理解しておくべきだった。と後悔しました。

次回上演することがあったら、もっとちゃんと事前に勉強して、理解を深めたいなと思います。

恐らく、年齢や今置かれている状況などによって感じ方や、

考え方は変わると思うので、次が何年後かは分からないけれど、再度見たい作品でした。

それでは!ごきげんよう

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